「この」の使い方は?

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指示詞対象との距離感
「この」 使い方話し手の近くにある対象
その聞き手の近くにある対象
あの両者から遠い場所にある対象
対象との物理的距離に基づいて適切な表現を選択します。
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「この」 使い方とは?話し手と聞き手の距離感によって変わる指示詞の基本と使い分けのルール

「この」 使い方を正しく理解することは、相手との円滑なコミュニケーションに欠かせません。言葉選びを間違えると、自分の意図が正確に伝わらず誤解を招く原因になります。基本のルールを学ぶことで、日常会話の質を向上させ、正確な表現を目指します。

「この」とは何か?基本的な使い方のルール

「この」は、日本語の指示詞(こそあど言葉)の一つで、話し手の近くにある物や事柄を指し示す役割を持ちます。文法的には「連体詞」と呼ばれ、単独では使えず、必ず「この本」「この人」のように後ろに名詞を伴うのが最大の特徴です。物理的な距離だけでなく、今まさに話題にしていることや、話し手が自分に近いと感じている心理的な対象にも使われます。

日常会話において、指示詞は非常に高い頻度で使われています。これほど使用頻度が高い言葉ですが、実は多くの学習者が「これ」との使い分けや、「その」との境界線で迷うことがあります。指示詞の使い分けをマスターするだけで、会話の自然さは大きく向上します。しかし、多くの人が見落としがちな「心理的な距離感」という落とし穴もあります。これについては、後半の「心理的な使い分け」のセクションで詳しく解説します。

「この」と「これ」は何が違う?間違いやすいポイント

一番多い間違いは、「この」と「これ」を混同してしまうことです。シンプルに言えば、「この」はセットで使い、「これ」は一人で使います。例えば、「このペンは私のです」は正解ですが、「このは私のです」とは言えません。一方で「これは私のです」は正しい文章になります。このように、後ろに具体的な名前(名詞)が続くかどうかが判断の基準になります。

私も日本語を教え始めたばかりの頃、学生が「これ本」と言ってしまうのを何度も修正した経験があります。統計によると、初級学習者の多くが、この名詞修飾のルールでミスを犯しやすいというデータ[2] があります。慣れるまでは「この + 何か(物)」というリズムを指に覚え込ませるのが一番の近道です。理屈で考えるよりも、リズムで覚える。これが上達のコツです。

「この・その・あの」距離感による使い分けの基本

日本語の指示詞は、自分と相手のどちらに近いかで決まります。「この」は話し手(自分)のエリアにあるものを指します。専門的な用語では「近称(きんしょう)」と呼ばれます。手が届く範囲にあるものや、自分が持っているものを指すときは、迷わず「この」を使いましょう。

物理的な距離による分類

物理的な距離での使い分けは、以下の3つのパターンで整理すると分かりやすくなります。多くの場合、話し手から1メートル以内の範囲にあるものが「この」の対象となります。 この(近称): 話し手のすぐ近く、または話し手のパーソナルスペース内にあるもの。 その(中称): 聞き手(相手)の近くにあるもの。自分からは少し離れている。 あの(遠称): 自分からも相手からも遠い場所にあるもの。二人で遠くを眺めている状態。

実際に、教室でのやり取りを観察すると、聞き手の近くにある物を指して「この」と言ってしまうミスが散見されます。相手の持っている物を指すときは「その」を使わなければなりません。自分と相手の間に目に見えない境界線を引くイメージを持つと、使い分けがずっと楽になります。境界線を意識すること。これが大切です。

物理的な距離だけじゃない!心理的な「この」の使い方

冒頭で触れた「心理的な距離感」についてお話しします。指示詞は、目の前にない「話題の中の事柄」を指すときにも使われます。この場合、「この」は話し手が今まさに頭の中で一番強く意識していること、つまり「自分の問題」として捉えていることを指します。逆に「その」は、相手が言ったことや、少し客観的に眺めていることを指す傾向があります。

調査によれば、日本語学習者の多くが、この心理的・文脈的な指示詞の使い分けに難しさを感じていることが[3] わかっています。物理的な距離は目に見えますが、心の距離は見えないからです。例えば、自分が今提案している企画を「この企画」と言うのは、それが自分に属していると感じているからです。一方で、他人の提案に対して「その企画は良いですね」と言うのは、それが相手の領域にあるからです。

私は以前、プレゼン中に自分の資料を「その資料」と言ってしまい、聞き手を混乱させたことがあります。自分の手元にある、自分が作った資料なら「この資料」と言うべきでした。言葉一つで, その事柄に対する責任感や当事者意識まで伝わってしまう。日本語の指示詞には、そんな奥深さがあります。興味深いですよね。

ビジネスシーンでよく使う「この」の定型表現

ビジネスの場では、「この」の使い方を使った特定の言い回しが頻出します。これらを知っておくだけで、メールや会議での信頼度が上がります。特に「この度(このたび)」は、感謝やお詫びの場面で欠かせない言葉です。

「この度」と「今回」の使い分け

「この度」は「今回」の丁寧な表現です。公式な挨拶や、お客様へのメールなどでよく使われます。 この度: 「この度は、多大なるご支援をいただき...」のように、非常にフォーマルな印象を与えます。 今回: 「今回の会議では...」のように、日常的な業務連絡で使われます。

また、「この件(このけん)」という表現もよく使われます。「この件につきましては、私が担当いたします」と言えば、現在話し合っている特定のトピックを明確に指すことができます。ビジネスメールsの分析では、「この件」というフレーズは返信メールに頻繁に含まれる傾向があり、コミュニケーションを円滑にするための重要な表現と言えます。

よくある間違いと克服法

「この」の使い方で迷ったら、まずは「指で指せるか」を確認してみてください。物理的な物であれば、自分の指が届く範囲なら「この」です。もし相手の方が近ければ、指を相手に向けて「その」と言いましょう。これだけで、基本的なミスは防げます。

学習者が陥りやすい罠として、「どの」との混同もあります。「どの本ですか?」と聞かれたら、「この本です」と答えるのが自然な流れです。疑問詞とのセットで覚えるのも効果的です。間違いを恐れずに使ってみること。それが一番の薬です。最初は間違えても構いません。私も、何年もかけて体に染み込ませてきましたから。

「この・その・あの」の比較リスト

日常会話で最もよく使われる3つの指示詞について、それぞれの特徴と適切なシチュエーションをまとめました。

この (Kono)

- 自分が深く関わっている、または今まさに考えていること

- 話し手のすぐ近く(自分側)

- 自分が持っているペン、自分の意見、現在の日付

その (Sono)

- 相手が話したこと、または自分から少し切り離して考えていること

- 聞き手の近く(相手側)

- 相手が持っているスマホ、相手のアイデア、先ほど出た話題

あの (Ano)

- 二人ともよく知っている過去の思い出や、共通の知人

- 二人から遠い場所(あちら側)

- 遠くの山、去年の旅行の思い出、共通の友人

基本は「話し手からの距離」で決まりますが、会話の中では「自分たちの共有知識」か「相手だけの知識」かによって心理的に使い分けるのが上級者への第一歩です。

新人社員サトシさんの失敗と気づき

東京のIT企業に勤めるサトシさんは、会議の議事録作成で悩んでいました。彼は上司の発言に対しても自分のメモに対しても、すべて「この発言」「この内容」と書いてしまい、誰が何を言ったのか分からなくなってしまったのです。

上司から「これじゃ誰の意見か混乱するよ」と指摘されました。彼は、自分が書いたメモだけでなく、相手の領域にある情報まで「この」で統一しようとしていたのが原因でした。混乱の極みでした。

サトシさんは、自分の提案は「この案」、上司のアドバイスは「その指摘」と書き分けるようにしました。また、プロジェクト全体で共有している昨年のデータは「あの数値」と表現し、情報の所在を明確にしました。

結果として、議事録の修正依頼が80%減少し、チーム内での情報共有がスムーズになりました。わずか1ヶ月で「説明が分かりやすくなった」と評価されるようになったのです。

よくある誤解

「この本」と言いたい時に「これ本」と言ってしまいます。どうすれば直りますか?

「この」は後ろに名詞が必要な『接着剤』のような言葉だとイメージしてください。「これ」は単独で名詞として機能します。「この + 物」のセットで何度も声に出して練習するのが最も効果的です。

ビジネスメールで「この度」と「今回」はどちらが良いですか?

より丁寧な印象を与えたい場合は「この度」を使いましょう。日常的な連絡や社内向けのメールであれば「今回」で問題ありません。迷ったら「この度」を使えば間違いありません。

相手が持っている物を指す時に「この」と言ってもいいですか?

基本的にはNGです。相手が持っているものは相手の領域なので「その」を使いましょう。ただし、二人で一緒に一つのものを見ているような密着した状況では「この」を使うこともあります。

一般概要

「この」は必ず後ろに名詞を伴う

「この」単独では使えず、「この+名詞」の形で使用します。これは「これ」との最大の違いです。

話し手に最も近いエリアを指す

物理的、または心理的に自分に近いもの、自分が所有しているもの、自分が今意識していることに使います。

もっと詳しく言葉の意味を知りたい方は、こちらのこの言葉の意味は?という記事もぜひ参考にしてみてくださいね。
心理的な当事者意識を表す

話題の中で「この」を使うと、その問題に自分も深く関わっているというニュアンスが伝わります。

ビジネスでは「この度」が重要

フォーマルな場面での挨拶として「この度」を使いこなせると、プロフェッショナルな印象を与えられます。

注釈

  • [2] Cocopb - 初級学習者の多くが、この名詞修飾のルールでミスを犯しやすい。
  • [3] Coelang - 日本語学習者の多くが、この心理的・文脈的な指示詞の使い分けに難しさを感じている。