国内のSaaS企業は?
国内のSaaS企業:ホリゾンタルとバーティカルの分類
多くの国内のSaaS企業が業務効率化を支援しており、選択肢が増えています。各企業の提供するサービスが特定の業界課題や汎用的な業務課題のどちらに対応するかを理解すると、最適なツールを選べます。企業選びで失敗しないためにも、まずはこれらの基本的な分類を把握しておきましょう。
国内のSaaS企業とは?市場の現状と全体像
日本国内のSaaS企業は、特定の業務課題を解決する「ホリゾンタルSaaS 企業一覧」に該当するサービスと、特定業界に特化した「バーティカルSaaS 日本企業」に大別されます。自社の課題がどこにあるのかを明確にすることが、最適なサービスを選ぶための第一歩です。
2026年の国内SaaS市場は1兆6,600億円規模に達し、毎年約13%のペースで成長を続けています。クラウド化の波は止まらず、SaaS製品がERP市場全体に占める割合は2025年には約25%に拡大しました。これほど市場が拡大している理由は明白です。自社でサーバーを構築して保守するよりも、必要な時に必要な分だけ利用する方が、圧倒的に効率的だからです。
SaaSの導入 - そしてこれは多くの経営者が誤解している点ですが - 単なるツールの入れ替えではありません。業務プロセスそのものを見直す絶好の機会なのです。しかし、多くの企業がSaaS選びで陥る致命的な罠があります。この点については、後ほどSaaS導入のリアルな事例セクションで詳しく解説します。
ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いがよくわからない方へ
SaaS企業を理解する上で、この2つの分類は避けて通れません。それぞれに全く異なるアプローチと強みがあります。
ホリゾンタルSaaS(業務特化型)
ホリゾンタルSaaSは、業種を問わず特定の業務プロセス(経理、人事、労務、営業など)を徹底的に効率化します。バックオフィス業務を標準化し、無駄を省くのに非常に適しています。
バーティカルSaaS(業界特化型)
一方、バーティカルSaaSは、建設業や医療、不動産、宿泊業など、特定の業界ならではの課題を深く解決するサービスです。業界特有の商慣習や法律、現場の特殊な動きに最初から対応しているのが最大の強みです。
世間の常識では「まずは汎用的なホリゾンタルSaaSを入れるべき」と考えられがちです。しかし、長年のシステム導入経験から言うと、これは必ずしも正解ではありません。特定の業界においては、独自の業務フローに無理やり汎用ツールを合わせるよりも、最初からバーティカルSaaSを選んだ方が、現場の反発が少なくスムーズに定着するケースがかなり多いのです。
代表的な国内SaaS企業一覧(ホリゾンタルSaaS編)
どのSaaS企業が業界のリーディングカンパニーなのか知りたいという声はよく聞かれます。ここでは、日本のバックオフィスや営業領域で圧倒的なシェアを持つ企業を紹介します。
バックオフィス・財務領域の注目企業
経費精算や会計業務をクラウド化する分野では、以下の企業が代表的です。
ラクスは「楽楽精算」などを提供し、中小企業から絶大な支持を集めています。freeeは「freee会計」を通じて、スモールビジネスのバックオフィス業務を根本から変革しました。マネーフォワードも「マネーフォワード クラウド」を展開し、個人事業主から大企業まで幅広いニーズに柔軟に対応しています。
営業・業務DX・人事領域
Sansanは名刺管理から始まり、現在は請求書管理の「Bill One」など、ビジネスインフラとしての地位を確固たるものにしました。サイボウズの「kintone」は、プログラミング不要で業務アプリを作成できる点が大きな魅力です。人事・労務分野では、SmartHRが面倒な書類手続きをクラウド上で完結させ、市場を力強くリードしています。
正直なところ、これらの有名なSaaSを導入したからといって、すぐに業務が改善されるわけではありません。私自身、過去にある企業で高機能なCRMを導入したものの、現場の入力負担が逆に増えてしまい、月額30万円のコストが完全に無駄になった苦い経験があります。
多機能なシステムほど現場に定着しない(少なくとも最初の数ヶ月は)というのが、私の長年の失敗から得た結論です。重要なのは、現場の使いやすさです。よくある話です。
業界特化で急成長するバーティカルSaaS企業
汎用ツールでは決して解決できない業界特有の深い課題に切り込むのが、バーティカルSaaS企業の役割です。
例えば、アンドパッドは建設業界向けの施工管理アプリを提供し、紙や電話、FAXが中心だった現場のアナログな情報共有を完全にデジタル化しました。また、医療分野ではUbieがAIを活用した問診サービスを展開し、医師の膨大な業務負担軽減と患者の適切な医療アクセスを同時に支援しています。
現在、大企業では1社あたり平均128個のSaaSを導入しています。これだけツールが増えると、今度は連携が取れずに情報がバラバラに分断される「SaaSスプロール(乱立)」という新たな問題が発生します。
解決策はシンプルです。業務のハブとなる基幹システムを1つ決め、そこに連携できるツールだけを厳選していくことです。無理に1つの巨大なシステムに全てを統合しようとすると、必ずどこかで破綻します。
SaaS導入モデルの比較:ホリゾンタルかバーティカルか
SaaS企業が多すぎて自社の課題に合うサービスが見つけられないという方のために、2つのアプローチの違いを明確に整理しました。
ホリゾンタルSaaS
- 汎用的な設計のため、標準的な業務フローを持つ企業には最適
- 業種を問わず、特定の業務(経理、人事、営業など)に特化
- 特殊な商慣習や複雑な業務フローには適合しにくい場合がある
- 利用企業数が多いため、比較的安価な月額料金から始められる
バーティカルSaaS
- 業界用語や特有の業務フローが最初から組み込まれているため定着しやすい
- 建設、医療、飲食、不動産など、特定の業界全体に深く特化
- 対象業界以外の企業では、専門的すぎて機能を持て余してしまう
- 専門性が高くターゲットが絞られるため、汎用ツールに比べてやや割高になるケースも
一般的なオフィス業務の効率化が目的ならホリゾンタルSaaSが適しています。一方、現場の特殊な作業や業界特有の規制に対応する必要がある場合は、バーティカルSaaSを選ぶ方が、結果的に追加の開発やカスタマイズ費用を大幅に抑えられます。中堅企業におけるSaaS導入の失敗と再起
都内の従業員300名の製造業では、各部署が独自の判断で便利なSaaSを次々と導入した結果、社内で50種類以上のツールが乱立していました。現場からは「データが分散して探しにくい」「二重入力が発生している」と不満が続出していました。
最初は、情報システム部がすべてのSaaSの利用を一時停止し、1つの巨大な高額基幹システムにすべてを統合しようと試みました。結果は惨敗でした。現場の細かい業務フローに全く合わず、猛反発にあって移行プロジェクトは完全に頓挫してしまいました。
数ヶ月の混乱と疲労の後、方針を大きく転換しました。無理に1つに統合するのではなく、業務のハブとなる基幹ツールを1つだけ定め、そこにAPI連携できるSaaSだけを選別して残すという緩やかなルールを作ったのです。
半年後には利用ツールを20種類に整理できました。システム管理コストは約40%削減され、情報検索の無駄な時間も大幅に短縮されました。完璧な統合を目指すのではなく、現実的な連携を重視したことが、最大の成功の鍵でした。
同じトピックの質問
SaaS企業が多すぎて自社の課題に合うサービスが見つけられないのですが?
まずは自社の課題が「特定の業務(経理や人事など)」にあるのか、「業界特有のフロー(建設現場の管理など)」にあるのかを切り分けてください。業務特化ならホリゾンタルSaaS、業界特化ならバーティカルSaaSから探すことで、選択肢を大幅に絞り込むことができます。
ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いがよくわからないのですが?
ホリゾンタルSaaSは「誰でも使える包丁」のようなもので、業種を問わず特定の業務を効率化します。一方、バーティカルSaaSは「刺身包丁」のように、特定の業界の深い課題を解決するために作られた専門性の高いツールです。
どのSaaS企業が業界のリーディングカンパニーなのか知りたいです。
バックオフィス領域ではラクス、freee、マネーフォワードが代表的です。営業・組織管理ではSansanやサイボウズ、人事労務ではSmartHRが圧倒的なシェアを持っています。業界特化型では、建設業のANDPADや医療のUbieなどが各分野を力強く牽引しています。
SaaSの導入を検討しているが、サポート体制や信頼性に不安があります。
いきなり全社展開するのではなく、1つの部署や小規模なプロジェクトチームからスモールスタートすることをお勧めします。トライアル期間中に、チャットや電話でのサポート対応のスピードや質を実際に確認してから、本格導入を決めるのが最も安全な方法です。
全体像
課題の性質を見極める自社の課題が業界特有のものか、一般的な業務プロセスにあるのかを明確にし、ホリゾンタルとバーティカルを使い分けることが重要です。
多機能よりも使いやすさ機能が豊富なSaaSが必ずしも優れているわけではありません。現場の担当者が直感的に入力でき、定着しやすいシンプルなUIを持つサービスを選びましょう。
ツールの乱立(スプロール)を防ぐ各部署がバラバラにSaaSを導入するとデータが分断されます。中核となるシステムを定め、そこにAPI連携できるツールで全体のエコシステムを構築してください。
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